プロモーションツールの特性と役割を考えてみよう

ウェブサイトやチラシ、名刺などのプロモーションツールって、それぞれが何のために必要なのでしょうか?

私どもDUCK WORKS、その問いに対して「とりあえず要ると思うんだよね」とおっしゃられるクライアントには「そのツールを欲しいと感じた背景にはどんな要望がありますか?」と訊ねます。ここが「みんなやってるから」「とりあえず要るかと思って」という具合に曖昧だと、制作物も曖昧なものになりやすいのですね。

さあプロモーションをやるぞ!と思い立ったなら、慌てて業者に発注するなり自分で作ったりする前に、それぞれのツールの特性について見直してみましょう。その過程で、本当に要るものとそうでないものが見えてきたり、着手すべき優先順位が見えてきたりします。

特に、個人で開業しよう・サービスの提供を始めようとお考えの場合は、予算がシビアに限られていることが多いです。こういった方々こそ、自分にとって本当に必要なものを適切な順番で取り入れていけるように、「プロモーションツールって何?」「私が成し遂げたい目的って何だっけ?」という視点を持って、それらを選択していかれることをおすすめします。

というわけで、今回の記事では、主に個人で開業しよう!プロモーションを始めよう!と考えておられる方を想定して、「プロモーションツールの特性と役割」についてお話します。

プロモーションツールとは、あなたの分身

今回は、個人でも扱いやすいであろうツールをいくつか例に出し、それぞれの役割について説明します。

プロモーションツールの特性と役割を考えてみよう

とても大まかに言うと、ウェブサイトやブログは「あなた自身を表現し提供するもの」、SNSや名刺、チラシなどのツールは、「相手からあなたに興味をもってもらうもの」として使います。

残念ながら人の興味というものは大抵の場合とても有効期間が短いもので、それをできるだけ持続させるためには、相手の興味が生まれた段階から間を空けずに次の刺激を与える必要があります。チラシを撒いたらその先、名刺を配ったらその先、SNSでフォロワーを集めたらその先……を用意しておく必要があるわけです。できれば、「相手からあなたに興味をもってもらうもの」と「あなた自身を表現し提供するもの」の両方を用意しておくことをおすすめします。

そしてこれらのツールは「あなたの分身」なので、“あなた”の像がしっかりしていないとうまく機能しません。なので、「とりあえず要ると思うんだよね」の段階でツールを作るのは本当におすすめいたしません。まずはしっかりとご自身について考え抜いていただき、分身を作る準備をしていただく必要があります。難しく考えすぎる必要はありませんが、まったく考えていない段階で作られたツールはあまりいいものにならないと認識してください。

“あなた”の像をしっかりさせるのに使える『ヒアリングシート』を配布しています。

もし、「よっしゃ、いっちょ自分(事業)についてじっくり考えてみよう!」と思われた方は、思考を深める手段のひとつとしてヒアリングシートを使ってみるといいかもしれません。無料ですので、ぜひお気軽にダウンロードしてくださいね。

あなた自身を表現し提供するもの

プロモーションツールの特性と役割を考えてみよう

ウェブサイト

ウェブサイトは、言わば『自分らしさを押し出したあなた自身』です。あなたのコンセプトや経歴・活動内容・サービス情報……などなど、あなたの“事業の軸”と呼べるものに理想を反映した状態で、ウェブ上に設置することができます。

ウェブ上で集客やもてなしを行う必要がない場合は、ウェブサイトの重要度は下がります。例えば、地域密着型でウェブを介さなくても人が集まる・SNSやリアルでの繋がりだけで人が集まるような状態が作れている、なおかつウェブを介した新規開拓をする気がないならば、ウェブサイトは要りません。

逆に、それらを必要とするならば、ウェブサイトはかなり重要度が高いツールだと考えた方が良いです。

ウェブサイトの強み

  • 掲載できる情報量が多く、複雑な内容にも耐えうる。
  • 情報を固定し、まとめて提供することができる。
  • 申し込みフォームや決済システム等、顧客の行動をキャッチする仕組みを入れられる。
  • 世界観を作りやすく、深めやすい。

ウェブサイトの弱み

  • ウェブサイト単体では広まりにくい。
  • 情報量が多いため、構成をつくるのに知識とエネルギーが必要。
  • 構築や維持に専門的な技術が必要なため、コストがかかりがち。

例えば、新しく知り合った誰かに「何だか面白そうな人だったな」と思われたあと、次に会う約束が定期的に取り付けられる場合はそれで良いですが、その場かぎりでコンタクトが途切れてしまうことも多いと思います。

業態やターゲット層などにもよりますが、事業の軸をウェブ上に設置しておくと、「会っても会いっぱなし」「せっかく興味を持たれても持たれっぱなし」、そしてそのうち忘れられる……というもったいない現象をある程度救済することができます。ウェブサイトには“相手の興味を持続させるための仕掛け”と“興味が行動力に変化したときのリアクション”を仕込んでおけるので、どうにかして相手をウェブサイトに誘導できれば、興味のその先を期待できるのです。

めちゃくちゃ基本的なところでいくと、前者はコンセプトやサービスの紹介等、後者は購入や申し込みのためのメールフォームや決済の仕組み等を指します。(DUCK WORKSではフロントエンドのみ対応可能ですので、決済の仕組み等に関しては外部サービスのご利用をおすすめする形になります)

コンタクトや興味を持続させるためにはSNSで繋がりを持つことも有効ですが、ここで気をつけたいのは“SNSの情報は断片的になりがち”だということです。相手の興味が「そもそもこの人はどういう人なのだろう」というところに向いている段階では、SNSに散らばる断片的な情報だけだと理解が偏る可能性があります。

ウェブサイトは、先程も挙げたとおり『多量で複雑な情報をウェブ上に固定しておけるもの』です。要は、断片的なあなたではなく、あなた自身とあなたが伝えたいことをひとところにまとめておけるのです。まとまった情報を相手に提供すれば、「そもそもこの人はどういう人なのだろう」という相手からの興味に応えることができます。SNSや名刺、チラシなどのツールや、Googleなどの検索エンジン、そして第三者の好意的な紹介から“あなたに興味を持った人たち”が導かれてやってくるゴールのようなものと考えるといいでしょう。

ブログ

ブログは、言わばあなたの『あなた自身とあなたの理想に深みを持たせる書籍』です。SNSやチラシに比べて多くの情報が掲載でき、なおかつそれらを蓄積していくことができます。こちらも、ウェブサイトと同様、ウェブ上でのプロモーションに力を入れないのであれば重要度は下がります。

ブログの強み

  • SNSなどの他のツールで発信したことの信憑性や信頼性を深められる。
  • 人柄や個性を魅力として伝えられる。(顧客視点で、あなたの提供するサービスと合う・合わないの判断材料になる)
  • 記事を蓄積できるため、資産になる。

ブログの弱み

  • SNSに比べて文章のボリュームと質を求められるため、発信に労力がかかる。
  • 「更新しなきゃ」というプレッシャーになりやすい。
  • 記事が蓄積されるため、情報のカテゴライズにある程度計画性と手間が必要。

ブログはウェブサイトに比べて情報を整理したり仕掛けを入れることは難しいですが、工夫をすれば“相手の興味を持続させるための仕掛け”と“興味が行動力に変化したときのリアクション”を仕込めます。予算の関係などでウェブサイトが持てない場合に、ある程度代役として使うことができるのです。

また、ブログは使い方によってはGoogleなどの検索エンジンから見込み顧客を集めるためのツールにもなり得ます。コンテンツマーケティングに興味がある場合は、勉強してみるととても面白いですよ。

相手からあなたに興味をもってもらうもの

プロモーションツールの特性と役割を考えてみよう

SNS

SNSは、言わばあなたの『カジュアルなラジオ局』です。ウェブサイトやブログではある程度居ずまいを正しているあなたが、少し肩の力を抜いて発信できる場所だと考えましょう。

カジュアルであるが故、あなたの人柄や想い・そのとき感じたことなどが表れやすく、さらにそれらが断片的に漂っては消える場所、というイメージです。あなたの発信するカジュアルな断片を拾った人が、「好きかも」と思ってくれれば継続的に受信してくれますし、あなたも「好きかも」と思った人の断片を受信し続けることができます。そして、昨今はそういった断片的な情報を持ち寄った受発信と交流が、あらゆるSNSで営まれています。

SNSの強み

  • 発信する情報に重みを持たせる必要がなく、短スパンで情報を発信しやすい。
  • 誰かの発言をきっかけに思考を刺激され、ネタを見つけやすい。
  • 直接の知り合いでなくてもフォロー関係になれるため、輪が広がりやすい。
  • ウェブサイトやブログへの導線が作れる。

SNSの弱み

  • 情報を発信しやすいために、事業の軸からズレた発言が増えがち。
  • 発信した情報が流れやすく、発信した情報ひとつひとつの寿命が非常に短い。
  • 輪を広げる努力をしないと、労力の割に事業への貢献度が上がりにくい。

SNSは情報が流れるスピードが速く、その場に留めておくことができません。瞬間的にどれだけのインパクトを周囲に与えられるかどうかでその情報の寿命と価値が決まります。

この価値が非常に高くなったものがいわゆる『バズ』というものです。これに憧れている方も多いですが、バズを狙って起こすには相当のテクニックと流れが必要ですから、最初のうちはそういった派手な部分には期待をかけないでおきましょう。飽くまでも、SNS運用で得られることは、交流と認知の拡大、そしてウェブサイトやブログへの導線だと思っておいた方がいいです。

また、SNSにはさまざまな種類があります。種類によって機能や得意分野、集まっている人々の属性(年代や性別など)が変わってくるので、それぞれの特性をご自身の事業内容や運用目的と照らし合わせて選ぶことが大切です。

チラシ

チラシは、言わばあなたの『お手紙が書かれた紙ヒコーキ』です。一度想いと情報を込めたら、あなたの手を離れ、顔が見えない相手の手元に届きます。お手紙なので、大抵の場合は毎日は書きませんし届けません。主に、特別なお知らせがあるときに書いて相手に届けます。そして、一定の期間が過ぎて情報が古くなったら、その役目を終えます。

チラシの強み

  • 配布場所や方法を確保できれば、ある程度ひとり歩きしてくれる。
  • 情報をまとめて相手に伝えられる。
  • 相手の興味を刺激できれば、手元にキープ&コンタクトしてもらえる。

チラシの弱み

  • 配布場所や方法の確保に手間とコストがかかる。
  • 目を引き興味を引く仕掛けがないと、手に取ってもらえない。
  • 情報が更新されないため、使用期間が短くなりがち。

チラシはその特性上、イベントごとと相性がいいツールです。「オープンしました!」「感謝セールをやります!」など、事業にブーストをかけたいタイミングで利用するケースが多いでしょう。

また、地域密着型の事業や人づてに顧客を増やしていく事業、顧客・ターゲットの年齢層が高い事業の場合は、チラシが活躍する割合が比較的高いです。

名刺

名刺やショップカードは、言わばあなたの『残像』です。この『残像』というのは、「あー、こんな人いたなぁ」というぼんやりした印象が残る、ということです。取引が既に決まっているなど、確実に連絡を取り合うといった関係性で交換する場合は『残像』よりも遥かに実用的な『連絡手段のメモ』になります。

しかしながら、個人で事業を立ち上げ、プロモーションを始めたばかりの段階では、おそらく『残像』として機能することが多いかと思います。

名刺の強み

  • 相手と直接顔を合わせて渡すため、相手の記憶に残しやすい。
  • 相手に自分に対する興味を持ってもらうきっかけとなり得る。
  • 相手の興味を刺激できれば、手元にキープ&コンタクトしてもらえる。

名刺の弱み

  • いろいろな人からもらうので、まぎれがち・失くしがち。
  • 紙面が小さいため、情報があまり載せられない。もしくは、画面に対して情報過多・煩雑になりやすい。
  • 相手の興味を刺激できなければ、忘れ去られる。

名刺というツールは、最も「とりあえず持っていないとダメだろうから作る」となりやすいものです。確かに、とりあえず持っていないとダメなものではありますが、だからこそ「とりあえず・何となく」で作ってしまうと、相手の記憶に残らない、それこそ『はちゃめちゃに弱い残像』としてしか機能しないものになってしまいます。

思いきって、名刺は『残像』だと捉えると、よりはっきりと自分の像を相手に残すためにどんな工夫をしようか悩むでしょう。これには、本当に必要な情報を絞り込み一点集中でインパクトを出すこと、そして「〇〇さん=△△の人」と印象づける要素を盛り込むことが大切です。加えて、ウェブサイトやブログ、SNSなどの「すぐに情報が得られる場所」への導線を設置しておくと、『残像』に“興味を持続させるための仕掛け”を付加できます。

また、名刺はプロモーションツールとしての側面以外に、単純に社会での必需品という側面も強いです。なので、名刺に社交辞令というシンプルな役割だけを期待するならば、敢えて手間とコストを削って作るのも手です。

あなたに必要なプロモーションツールと優先順位を考える

プロモーションツールの特性と役割を考えてみよう

各ツールの特性を参考にしつつ、「どのような目的を達成するために、どのツールをどの順番で選ぶのか」について考えてみると、導入の計画が立ち無駄なコストを省くことができます。そして、「このツールにはこういった役割を担わせたい」というビジョンが見えれば、そこに懸けるコストとそれを回収するためのプランも設定しやすくなるはずです。

また、目的と理由を持って使い始めたツールは方向性がはっきりとしますので、活き活きと使うことができるでしょう。アイディアもどんどん湧きますし、「作ったはいいけれど活用できていない」といったもったいないものにせずに済みます。

逆に、既に「作ったはいいけれど活用できていない」ツールがあるならば、それらに改めて目的と使う理由を設定することで、生き返らせることができるかもしれません。心当たりがある方は、振り返ってみてくださいね。