『ペンタクル 9』は、たわわに実るブドウとペンタクルの庭に立つ優美な女性が主役として描かれています。たっぷりの布が使われたドレスにアクセサリーという装いで、手にはおそらく飼っている鳥を留まらせており、余裕のある暮らしぶりを伺わせます。経済的な豊かさだけでなく、文化的な豊かさも感じられる絵柄です。

このカードが占いの場に出たとき、思い浮かべるイメージのひとつに「独立して仕事をする人」というものがあります。ペンタクル(物質・現実・成果)の9(完成)ですから、このカードに描かれている人物は何かしらの物質的な成果を挙げ、ひとつの存在として世の中に認知されている状態がイメージできます。また、足下を這うカタツムリからは「地道な努力、着実に歩む姿勢」を想起します。そういった要素から「自分の能力で世の中を渡る人物」という像に結びつくのです。「個人事業主」や「フリーランス」と言い換えてもいいかもしれません。
私自身、フリーランスとして活動する中で感じている「フリーランスの最もいいところ」は、すべて自分で選んで自分で決められるところです。世の中においてどのような役割を担うか、そのために何をするか、どんな風に運用するか……などなど、原則として自由に決められます。自分の活動の方針から丸ごと自分で決められるという事実は、私にとってはとても心地がいいものです。
その分、選択と判断が命取りになる危険性もあります。自分以外に自分を守ったり責任を取ったりする人がいないので、そのあたりはえいやと覚悟するしかありません。
『ペンタクル 9』も似たような立場にあるのではないかと思います。カタツムリのように地道に磨いてきた能力を認められ、今は美しい庭で優雅に鳥と戯れているものの、いつまでもその状態をキープできるとも限りません。カタツムリのように地道に着実に歩み続け自身を磨き続けねば、周りの人たち、例えば彼女のクライアントたちは急に離れていってしまうかもしれません。
また、『ペンタクル 9』のイメージのひとつに「一芸を極める」というものがあります。描かれている人物のドレスには天体記号の金星(♀)に似た柄が入っており、その金星が司るものに「芸術」があることからそのようなイメージが浮かびます。
一芸を極めるには、相当強い覚悟が必要です。自分が選んだものを信じ、貫き、やり通した先にその境地があります。自分が選んだものを信じるには自分自身を信じる必要がありますし、そうするにはたくさんの「信じるための材料」が必要です。
ペンタクルのスートですから、このカードのお話で信じるべきは「物質・現実・成果」です。良くも悪くも現実に顕れた成果をベースに自分自身を観察すると、得手不得手が事実として見えてきます。ここから得られる、得意なものを得意だと信じる勇気、苦手なものを苦手だと認める勇気が、これから極めんとする道を信じるための材料になるはずです。