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掌の上の闘争 – 小アルカナ ワンド 5

『ワンド 5』は若者たちが棒を持って戦っている様子が描かれています。とはいえ彼らは鎧などを着ているわけでもなく、普段どおりの衣服です。おそらく本気の戦いではなく、スポーツや模擬演習のようなイメージでしょう。真剣だけれども深刻ではない雰囲気です。もしくは、遊んでいるうちに本気になって小競り合いに発展したのかもしれません。勝ち負けやそれによる悔しさ、彼らの関係性の変化などが起きるかもしれませんが、いずれにせよ本気で血が流れるような争いではないように思います。

タロット 小アルカナ ワンド 5

私はバスケ観戦の趣味があり、観戦時はまさにこのような状態です。相手を本気で傷つける気は一切なくとも、自分が応援するチームに勝ってほしいあまりに「さっきのはファールじゃないのぉ!?」などと声に出してしまうこともあります。ぜんぜん知り合いでも何でもない選手に対して「岡田ァー!そこやー!いけー!」などと文字にすると失礼に感じるような声援を送ることもよくあります。まさにワンドの性質「本能・情熱・衝動」で表現できる事象です。

それにしても、知り合いでも何でもない相手に対して呼び捨てかつ命令形で話しかけるなんてどういうことなのでしょうか。こちらはただのおばちゃんであり、恵まれた体躯に鍛え上げられた肉体、コントロールされたメンタルにキレた頭脳、洗練された技を持つプロ選手に向かって口を出すべきことではありません。例えば「岡田選手、僭越ながら申し上げますとそちらのエリアが空いているようです。もちろん岡田選手はすでにお気づきでしょうし、常人では把握し得ない広い視野とそこから得られる圧倒的な情報量、そこからの巧みな判別と判断をされているのでしょうから、私たちのような素人のお声がけなど野暮ですね……あぁ素晴らしい!何という鮮烈なドライブ!さすがです!ありがとうございます!」と言うくらいが適切なラインだと思います。

これはソードの性質が大きく影響した状態です。この記事を書いている今の私はまったく興奮しておらず、ソードの性質である「知性・思考・言語」が優位に立っているために上記のような意見になります。試合中は興奮・熱狂しており「本能・情熱・衝動」が優位に立つため、公衆の面前で「岡田ァーーーー!」などと叫ぶことができるわけですね。

「試合が終わればノーサイド」とラグビーの精神がよく語られますが、裏を返せば「試合中はサイドに寄って当たり前」です。例えば別チームを応援しているバスケ観戦仲間がいるとして、普段は仲がよくても試合が始まれば別々のチームを応援し、一方が喜べば一方が悔しがる状況になります。お互いの情熱がシーソーの両端に乗り会場の空気に緩急をつくることで、熱はまるで気流をつくるように渦巻き上昇していきます。そして試合が決着し、張りつめていた会場の空気が一気にゆるむと、熱は勢いを落とし温かい雰囲気に変わるのです。これは火のエレメントが割り当てられた「ワンド」の特性とも言えます。燃料がなくなればすうっと落ち着く、そういうイメージです。

同じものが好きだからこそ小競り合いに発展することもあります。サッカーの試合会場だと、ホーム側の座席エリアの入り口に「アウェー側のグッズを身に着けての入場は禁止」と書いてあったりします。本来であれば望ましくないことですが、情熱が暴走してトラブルを引き起こす可能性があるのでしょうね。

闘争本能は、おそらくどんな人間にも備わっているものです。スポーツはその本能を文化的に昇華したものと捉えることができます。この『ワンド 5』も、闘いが人々の日常に存在する事象として描かれており、人間は「本能・情熱・衝動」を平和的に取り扱うことができる、という希望が描かれているようにも思えます。

記事を書いた人

小濱香織(ももねこ)OBAMA KAORI

文章を書いたりコードを書いたり喋ったりする人。 このコラムでは主に占い(タロット・西洋占星術)の記事を書いています。 園芸とアクアリウムと自転車とバスケ観戦が好き。 とにかく楽しく生きています。

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