タロットの大アルカナは「魂の旅路」で、対する小アルカナは「人間のフツーの生活」だとよく言うのですが、その「フツーの生活」の中でも「これ何やねん」となるのがワンド 8です。
いや、これ何やねん。
棒が飛んでるんですよ。空を。滑空している?いずれにせよ宙に浮かんで動いている。左から右へと飛んできて、ピークを超えてそろそろ滑空が終わる、そういうタイミングだそうです。
カードの説明としては、「棒が空を飛ぶという奇跡のようなできごと、すなわち幸運のしるし」「うかうかしていると飛んでいってしまう幸運」「すぐに乗らねば逃がしてしまう好機」みたいなワードが並びます。このカードが出てきたら、とにかく今!ラッキーが目の前を通り過ぎようとしている!だから急いで動いて!という話になります。
それはいいんだけど、未だに(これ何やねん)って思いながら読まざるを得ない、ワンド 8。普通の生活にはまず出てこないであろう、空飛ぶ棒……
タロットは絵柄にいろいろな要素が散りばめられていて、そこからたくさんのイメージが広がって、時には邪推とも言えるような想像につないでいくのが大きな楽しみのひとつじゃないですか。特に小アルカナは日常生活に結びつけやすいし、実際にお客さま相手の占いをしていると「マジでこの絵のとおりだ~~~!」なんて声が上がるくらい、生々しく事象を映し出したりもするじゃないですか。
ただ、この絵はならない。そうならない。日常で飛ばないんだよ棒は。こんなに「わかる~~~」って言えない小アルカナ、他にないよ。わかる~~~ってならなくても別にいいけどさぁ。
わかる!と言えなくていい。それがワンドの領域
そもそもワンドですから、これらはまず「本能・情熱・衝動」の領域です。なので言うてしまえば棒が飛んでいることに理由も理屈もないのです。ほら、本能にも情熱にも衝動にも理由や理屈はないでしょう。考える前に身体が勝手に動く、気づけば走り出している、そういう状態がベースにあって、しかも数字の「8」なの。8は大いに盛り上がった勢いを表すと言えるので、ウワー!と湧いた衝動がMAXの勢いで噴き出しているの。
だから、棒が飛んでいることに理由は要らない。わけもなく、ただただ勢いよく棒が飛んでいるという事象だけを素直に受け止めることが大切なのね。「やっべー!何だあれ!よくわかんないけどすっげーレアなものを見たんじゃね!?超ラッキーじゃね!?」くらいの感じでいいんだと思います。あわよくば写真を撮って友人知人に「やばいもん見た!」って共有する楽しみも得られるし。(共有するのはカップの領域ね)
棒が飛んでいることに理由や理屈を見出そうとしてウンウン考えているうちに棒はどこかへ飛んでいってしまうわけで、そうなったら棒が目の前を通り過ぎていった、けれども特に何もできなかった、っていう切ない話にもなるんですよね。
ワンドを無視しない、軽視しない
人間は生きている中でどうしても頭を使ってしまって、合理的な理由や明確な利益を確信してからでないと動けないことがあると思います。もちろん個々の性質にもよるけれど、頭の中で自分を納得させるための材料を集めて、それがまとまったら動く、というのがクセになっている人も多いんじゃないかな。衝動的に動くのはナンセンスだ、周りの共感がないからやるべきじゃない、クレバーにやらなきゃ無駄になる、利益や価値が確定していないのに動いてどうするの……?そんな風に自分を制するクセ。
それはもちろん人間のふるまいとしては大いにアリですよ。群れで生きる、しかも知性と文化を持った生きものである以上、周囲との調和や先人の知見を踏まえての合理的・損をしない判断はやって当たり前とも言える。
ただ、タロットの世界的にはワンドはすべての素なんですね。ワンドの炎がぽっと灯るからこそ、そしてその火を絶やさず育てていくからこそ、カップやソードを経てペンタクルが生まれる。ワンドを軽視したり無視したりすると、そもそも何も生まれないのだ。
ワンド 8に対する「これ何やねん」の裏には、ワンドを軽視するなよという自分自身からのお叱りが含まれているように感じます。意味わからんけど乗ってみる、根拠はないけど動いてみる、何になるかわからないけど実行してみる、ということが如何に大切かを改めて教えてくれるカードだなと思うのです。
ワンド 8は「幸運のしるし」
いろいろ言いましたけど、ワンド 8は「幸運」というのが大前提にあるので、出てきたら素直に「ヤッター!」と喜べる1枚だったりします。
何かよくわからんけど幸運が来てるんですよ、動いてみましょうよ!と言われて動ける人ってそんなにいなくないですか?そうなんだ!じゃあ動いてみよう!って素直に行動できる人は、たぶんいろいろな局面で本能的な第六感的なものを使って自分自身を助けられる人なんじゃないかなぁ。
なかなかそういう人にはなれないかもしれないけれど、タロットでワンド 8がええ感じのコンディションで出てきたときくらいはエイヤ!と動いてみてもいいのではないでしょうか。
ワンド 8の詳しい説明はこちら!
以下の記事で『ワンド 8』の意味を紹介しています。
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