『ソード A』には、雲から出る手に握られた剣が描かれています。剣には冠が掲げられ、その下には荒野が広がっています。まだ何もない世界に発生したばかりのソードのエネルギー、純粋無垢な「知性・思考・言語」のエッセンスを読み取ることができます。

朝、目が覚めた瞬間に「よっしゃこれで進めよう!」となることがたまにあります。眠っている間に脳が整理されて考えがまとまりアイディアになったのだと思いますが、それにしても目が覚めると同時に「!」となる感覚はなかなか面白いものです。何となくのモヤモヤがキュッとまとまり、気持ちよく動き出せるようになると一気に身体まで軽くなります。
先日、とある商品についてしつこくしつこく考えていました。リリースするにしても、何かが足りないような気がする。全体的なつくりは悪くないんだけれど、あと一歩、もう一段、何かを足したいような気がする……その「何か」の正体を探るべく脳みそを働かせていたのですが、なかなかしっくりきません。それなりにまとまった段階ではあったので、これはこういうアイテムだと決めてしまっても問題はないものの、でも、うーん……という状態でした。
ある朝、「あ!」というひらめきと一緒に目が覚めました。それまでに悩んでいた「何かが足りない」の「何か」が急に見えたような気になりました。そのひらめきを起点に考えはじめると、該当アイテムの活用法がするすると出てくるのです。私が足りないと思っていた「何か」の正体は、アイテムを手にしたあとの広がりでした。ああいう風にもこういう風にも使える、という自由さを楽しんでもらうために、もうひと工夫が欲しかったのです。
『ソード A』は「知性・思考・言語」の種です。雲から出た手は目に見えない高次の存在を表し、そこで生まれたばかりのエネルギーはまだ私たちの暮らす現世には降りてはいません。確実に在るけれども、触れることができないので気づきにくい存在です。けれども、気づけばそこからどんどん思考が根づき、芽が出、茎が伸び葉が伸び、すくすくと育っていきます。
また、ソードは刃物ですから、有象無象の思いつきの中から本当に育てていくべき種を見つけるために、不要な思いつきを削ぎ落す力を持っていると言えます。ああでもないこうでもないと考えていると、どの思いつきも捨てるのは惜しいと感じることがありますが、余分を削いで捨ててサッパリしないと出てこない種があるのでしょう。たくさんイメージしてたくさん要素を出したら、惜しまずにそれらを捨てることを覚悟しつつ、ひらめきが訪れるまで、『ソード A』の気配が天から降りてくるまで、じっくり待つといいかもしれません。