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積み上げた先に得るもの – 小アルカナ ペンタクル ナイト

タロットの『ペンタクル ナイト』は長年コツコツと積み上げてきた人です。これまでの経験が確実な実力となって、成果を生み出せる人として活躍しています。足もとにはきれいに耕された畑の畝が見え、ここに作物が実ることを想像させてくれます。

タロット 小アルカナ ペンタクル ナイト

占いをしていると、ときどき「私は特別なスキルも経験もなくて」とおっしゃる方がいます。そんなとき、『ペンタクル ナイト』が出てくれると「ほら!そんなことはないですよ!」と言えるので密かに嬉しくなります。

実際、何も積み上げずに人生を進めることは難しいです。経験のひとつひとつがこうしている間にも積み重なっていきます。今の私でいうと、この数分間で「キーボードのキーを打った回数」が数えるのも面倒なくらい増えています。

しかも『ペンタクル ナイト』はコートカードの「ナイト」です。初心者・初学者ではなく、これまでに実績を上げてきた人であり、これからも現場で重ねていく人です。もし、このカードがピンとこないなら、特別なスキルも経験もないのではなく、スキルや経験をうまく自覚できていない・言語化できていないと表現した方が適切なケースが多いでしょう。「ひととおりの動作ができる・求められたことができる」ことをリストアップして、そこから「効率よくできる・たくさんできる・続けられる・よりよくしようと考えられる」などの要素がつけられることを探せば、それは『ペンタクル ナイト』の領域だと言えます。

そして、「経験」はジャンルを飛び越えることができます。

例えば普通の自転車、いわゆるママチャリを運転できる人がいるとします。もう一人、自転車には乗ったことがないけれど原付は運転できる人がいるとします。いずれも初めて電動スクーターを運転するとしたら、前者はママチャリの運転経験を、後者は原付の運転経験を活かして乗ろうとするでしょう。
では、例えば野球経験者とテニス経験者がいるとして、ゴルフを始めるとしたら。はたまた、例えばカレー屋さんとおでん屋さんがいるとして、創作スイーツを作るとしたら。

いわゆる未経験のジャンルであっても、何かしらの経験や知識を下敷きに動ける範囲はたくさんあるはずです。というよりも、未経験のジャンルであったとしても、本当に頭の中を空っぽにしてゼロから学ぶことはかなり難しいですし、おそらく無理だと思います。

とあるクリエイターさんが、「私はこのツールを使ってモノを作りはじめてからはまだ数か月だけれど、それまでに何年も他のツールでモノを作り続けてきた経験がある。だからそれなりにはクオリティを担保できると自負している」と言うのを聞いたことがあります。私はそれを聞いたときに「なるほど」と思いましたし、実際にアウトプットされたモノを見たときに「確かに」と思いました。

経験というものは、クオリティを測るものさしの役割も果たすのでしょう。クリエイターさんが「これならば出せる」と判断したモノは、新しいツールに対する練度はどうあれ、アウトプットとしての質が担保されていました。おそらく慣れたツールよりも作業の効率が悪かったり、時間がかかったり、ストレスを抱えたりしたことは多かったと思います。けれど、最終的に「経験」が育てたものさし=クオリティを判断する目が、クリエイターさんの仕事を守っていました。

ここでクリエイターさんが「このツールにはまだ慣れていないから、自信がないな……」と“感覚”を優先していたら、コミュニケーションが変わり、印象も変わっていたと思います。「新しいツールに変えたので、今回はあんまり出来がよくないかもしれません。その代わり値引きします」などと言われていたら、私は「マジかよ大丈夫かよ」と不安になっていたでしょう。

そうではなく、クリエイターさんは「このツールにはまだ慣れていないから、クオリティチェックを厳しめにやって品質を担保しよう」と”経験”を優先して、いつもどおりのコミュニケーションができる状態を作り、印象を保ったのです。そしてそれができたのも、これまでの経験のたまもの。使い慣れたツールよりも効率が落ちることを想定して、「時間と労力を犠牲にしてでもやりきる」という判断ができたと言えます。

『ペンタクル ナイト』の絵柄からは、「経験を活かして新しいものを生み出す」というニュアンスも読み取れます。畑にはまだ何も植えられておらず、彼は「経験」を象徴するペンタクルを目の前に掲げ、前方を見据えてこれからの展開を思案するために立ち止まっている、という風にも見えます。昨年はトマトを植えたから、今年はししとうにしようか。それとも同じトマトにして、昨年よりも収穫量が増えるように挑戦しようか。昨年よりも甘いトマトを作ってみるか……もし、昨年と同じトマトを同じ量だけ作るとしても、天候などの影響で昨年とまったく同じというわけにはいきません。

いずれにせよ、新しいことをするときは過去の経験が土台になります。もしもここに自信が持てないのなら、『ペンタクル ナイト』のように立ち止まって、足下をしっかり観察するのがオススメです。これまでにやってきたことは、必ず人生を助けてくれるはずです。

記事を書いた人

小濱香織(ももねこ)OBAMA KAORI

文章を書いたりコードを書いたり喋ったりする人。 このコラムでは主に占い(タロット・西洋占星術)の記事を書いています。 園芸とアクアリウムと自転車とバスケ観戦が好き。 とにかく楽しく生きています。

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